第41章 嫉妬は欠片、好きの欠片

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「よかった。いつもの勇人だな」 ホッとした顔の岳に、へへへ、って笑うと岳が前髪をくっしゃくしゃにしてから、俺の頭をポンと叩いた。 「今日は部屋でまったり、にするか」 「はぁ? ダメだろっ! 今日は、岳が言ったんじゃん。一緒に探そうって」 ホワイトデーは一緒に少し高いところで飯でも食おうってことになった。 大きな駅まで行って、高級レストランの入ってそうなホテルとか予約して、そこでちょっと贅沢をしてみたり。 高いところなら個室もあるから、別料金掛かるだろうけど、そのほうがゆっくりできるだろうし。 で、今日はそのレストランを決めるための本屋デート。 本屋の店員さん的には買えよ! って言いたくなるだろうし、はたきで埃取る振りして追い出したいかもだけど 本屋のグルメ雑誌とデートコースとかが載ってる情報誌を見比べて探そうって話になった。 ネットがあるこの時代だけど、岳はスマホのラインすら取ってない非ネット民だから。 通販とかで物買うよりも、手に取って買いたい派だから。 本屋で調査のほうがいいって。 俺は物をプレゼントしようと思ってたんだ。 でも岳はブランド物にもアクセサリーにも興味がなくて、今欲しいのはスマホくらい。でもそれだって、今使っているのが故障したわけでもないから、焦っているわけじゃなくて、いつか替えたいなぁって程度。 「というか、外に出たほうがお前の気が紛れるかなと思っただけだ」 で、たまに一緒に出かけるショッピングモールを今、のんびり歩きながらお目当ての本屋へ向かってる。 「お前、この前のことで少しへこんでただろ」 「……あ、あれは」 「わかったか? 俺も同じだ」 くしゃっと笑ってくれた。 岳も俺と同じ。同じように嫉妬もするし、ヤキモチもする。 俺と同じように、俺のことを好きだから。 「へへ、うん、ごめん」 今、ちょっと気持ち的に勝手にひとりで盛り上がってるから、なんか真っ直ぐ岳のことが見えなくて、頷いたまま しばらく足元を見て、気持ちが落ち着くのを待とうかなって。
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