4714人が本棚に入れています
本棚に追加
「よかった。いつもの勇人だな」
ホッとした顔の岳に、へへへ、って笑うと岳が前髪をくっしゃくしゃにしてから、俺の頭をポンと叩いた。
「今日は部屋でまったり、にするか」
「はぁ? ダメだろっ! 今日は、岳が言ったんじゃん。一緒に探そうって」
ホワイトデーは一緒に少し高いところで飯でも食おうってことになった。
大きな駅まで行って、高級レストランの入ってそうなホテルとか予約して、そこでちょっと贅沢をしてみたり。
高いところなら個室もあるから、別料金掛かるだろうけど、そのほうがゆっくりできるだろうし。
で、今日はそのレストランを決めるための本屋デート。
本屋の店員さん的には買えよ! って言いたくなるだろうし、はたきで埃取る振りして追い出したいかもだけど
本屋のグルメ雑誌とデートコースとかが載ってる情報誌を見比べて探そうって話になった。
ネットがあるこの時代だけど、岳はスマホのラインすら取ってない非ネット民だから。
通販とかで物買うよりも、手に取って買いたい派だから。
本屋で調査のほうがいいって。
俺は物をプレゼントしようと思ってたんだ。
でも岳はブランド物にもアクセサリーにも興味がなくて、今欲しいのはスマホくらい。でもそれだって、今使っているのが故障したわけでもないから、焦っているわけじゃなくて、いつか替えたいなぁって程度。
「というか、外に出たほうがお前の気が紛れるかなと思っただけだ」
で、たまに一緒に出かけるショッピングモールを今、のんびり歩きながらお目当ての本屋へ向かってる。
「お前、この前のことで少しへこんでただろ」
「……あ、あれは」
「わかったか? 俺も同じだ」
くしゃっと笑ってくれた。
岳も俺と同じ。同じように嫉妬もするし、ヤキモチもする。
俺と同じように、俺のことを好きだから。
「へへ、うん、ごめん」
今、ちょっと気持ち的に勝手にひとりで盛り上がってるから、なんか真っ直ぐ岳のことが見えなくて、頷いたまま
しばらく足元を見て、気持ちが落ち着くのを待とうかなって。
最初のコメントを投稿しよう!