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え? もしかして、帰った? まだ全然来たばっかじゃん。
俺、先生に一緒に飲みましょうって誘っただけで、それ以外、何も話してねぇんだけど。
もっと、色々話したかったのに。
つか、俺が無理やり誘ったのを、優しい先生だから断れなくて渋々一杯だけ付き合ってくれたとか?
んで、俺にまた引き止められたら、ちょっと困るから、こっそり帰った?
もう、帰っちゃった、のかよ。
「なんだぁ、お前ら、今も仲良いのか?」
「っ!」
心臓が止まった。
「純、だろ?」
最初の一声で、俺は飛び上がるばっかりだったけど、純が後ろに立っているのが岳先生ってわかってすぐ、人、ひとり分のスペースを開けてくれた。「どうぞ」見たいに空いた席。
「よくわかりましたね」
「アハハ、敬語じゃなくていいって。そういうの慣れねぇから」
その席にグラスがさりげなく置かれる。
岳先生の飲みかけのグラスと、使っていた箸。先生、サワー飲んでるんだ。
俺もサワーだよ。
それ、なんのサワー?
そんな疑問に答えるように、グラスの中の氷がカランと音を立てた。
「おっ! 酔っ払ってるなぁ、勇人。顔真っ赤だぞ」
「……」
これは、酔っ払ってるからじゃねぇよ。
岳先生がいきなり、あそこの席からこっちにワープなんてしてきたりするから、ドキドキして真っ赤になったんだ。
「ホント、茹でダコだな」
俺がこんなにドキドキしてるのなんて知らずに、今みたいに、肩がちょこんって触れたりするから、余計に真っ赤になるんだよ。
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