第2章 岳先生は人気者

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え? もしかして、帰った? まだ全然来たばっかじゃん。 俺、先生に一緒に飲みましょうって誘っただけで、それ以外、何も話してねぇんだけど。 もっと、色々話したかったのに。 つか、俺が無理やり誘ったのを、優しい先生だから断れなくて渋々一杯だけ付き合ってくれたとか? んで、俺にまた引き止められたら、ちょっと困るから、こっそり帰った? もう、帰っちゃった、のかよ。 「なんだぁ、お前ら、今も仲良いのか?」 「っ!」 心臓が止まった。 「純、だろ?」 最初の一声で、俺は飛び上がるばっかりだったけど、純が後ろに立っているのが岳先生ってわかってすぐ、人、ひとり分のスペースを開けてくれた。「どうぞ」見たいに空いた席。 「よくわかりましたね」 「アハハ、敬語じゃなくていいって。そういうの慣れねぇから」 その席にグラスがさりげなく置かれる。 岳先生の飲みかけのグラスと、使っていた箸。先生、サワー飲んでるんだ。 俺もサワーだよ。 それ、なんのサワー? そんな疑問に答えるように、グラスの中の氷がカランと音を立てた。 「おっ! 酔っ払ってるなぁ、勇人。顔真っ赤だぞ」 「……」 これは、酔っ払ってるからじゃねぇよ。 岳先生がいきなり、あそこの席からこっちにワープなんてしてきたりするから、ドキドキして真っ赤になったんだ。 「ホント、茹でダコだな」 俺がこんなにドキドキしてるのなんて知らずに、今みたいに、肩がちょこんって触れたりするから、余計に真っ赤になるんだよ。
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