第38章 大っ、好きっ、です

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「岳先生と三人で飲んでた時もすっごい顔に出てたし。あれじゃ、倉敷さんも横恋慕する気にもならないと思うよ。岳先生が牽制する必要すらなかった」 「お、俺?」 「大っ、好きっ、です」 額を小突かれて、そのまま額をぐりぐりされて、最後、「です」のところで、鼻を思いっきり摘まれた。 いきなりされたら、ふごってなりそうなくらい、そして、幼馴染で親友だからこその距離感っつうか、悪戯っつうか。 「って、顔面にすっごい書いてあった。油性ペンのぶっといので書いてあるみたいに」 「……そ、そんなに?」 「おう。で、それを見て岳先生がげぼーっとこっちが砂吐きたくなるくらい、顔デロデロに嬉しそうにしてた」 「……」 「バカップルかっ!」 叫ばれて、顔が熱くて仕方がない。 そんなに出てたかな。 岳ってそんな顔してんのかな。 純と飲んでる時も全然俺にとってはいつもの岳だった。 もちろん、五歳の時に見上げてた岳よりも大人で渋くてカッコいいんだけど、いつもと変わらない岳だったのに。 砂吐きたくなるようなバカップルに見えたのかな。 男同士なのに、岳、ノンケなのに。 「おい、ごらぁ」 「イテッ」 「顔に出てるっつってんだろ」 「純、ヤンキーが滲み出てるぞ」 イヤンって甘くて可愛い、俺には出ねぇし、出ても似合わない可愛い顔をした純が酔っ払いらしくほっぺたを赤くして、俺の額を指先でピンと勢い良く弾いた。 「すっごいラブラブだよ」 「……」 「だから、そんな顔しない。んで、ホワイトデーとか気張らなくて大丈夫」 そんなこと言ってもさ、初めてバレンタインデーにあんなのもらったんだ。 すげぇ、大喜びさせてぇじゃん。 岳はきっと今までバレンタインデー、毎年じゃなくたってもらったことあるだろ? 義理じゃなくて本命のやつ。 そしたら、ホワイトデーに何かしてるかもしんねぇじゃん。 今年は相手が俺で、男で、あげるのと貰うのとで、なんかごっちゃごちゃになってるけどさ。 「気張りてぇんだよ……」 「……勇人」
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