第38章 大っ、好きっ、です

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別に過去と張り合う気なんてねぇし、張り合うつもりもない。 そんなんしたって勝てるわけじゃねぇし。 岳の初めてを全部貰うことなんてできないって、俺だってちゃんとわかってる。 そうじゃないんだ。 岳が今まで付き合ってきたのは女の人。 ノンケで、男の俺を好きになってくれたっていうのはすっげぇ奇跡的なことだと思うよ。 しかも、相手がノンケも落とせちゃうような純とかさ、今風で男女関係なくモテるような奴……なんかじゃない。 俺は普通だもん。 それでも好きになってくれた。 一線飛び越えて、純も呆れるようなバカップルに。 だから、ホワイトデーにすっげぇ喜んでもらえるものを渡したい。 男の俺と付き合って、恋人同士になったから、今年、岳は初めてバレンタインに渡す側になったんだ。 岳の正真正銘の「初めて」を俺は貰えた。 だから、気張りたい。 すげぇお返しがしたい。 「……うー」 唸りながら、頬杖ついて、シナシナしたポテトをひとつ口にする。 「恋してんなーっ!」 「純はオヤジしてんな……」 「ぶほっ!」 また顔に似合わない変な笑い声を上げながら、ポテトでケチャップをすくい、ほぼケチャップの味しかしなそうなくらい、こんもり乗せて口へと放り込んだ。 「うーん、純は? 今まで何贈ってた?」 「俺は俺、勇人は勇人、でしょうが!」 「そうだけどさぁ。参考までに」 「アクセサリー、香水、ネクタイ、あと、飴玉」 香水は完全アウト。ありえねぇ。 「だって、俺の好みのタイプと岳先生って真逆すぎない?」 「たしかに」 全然違う。 純はもっと綺麗系だよな。 あ、いや、岳が綺麗系じゃないとかではなく。
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