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びっくりした。
まさか岳が乱入してくるなんて、心臓止まった。
――だって、本人に聞くのが一番かなって。
しれっと答えて。この前、飲んだ時に連絡先だけはとりあえず交換してたんだって。
俺のことが心配で心配で仕方のない岳先生だからって、純があっけらかんと笑ってた。
「今日の送別会は?」
「んー? 終わったぞ? んで、帰りながら勇人に電話でもしようかと思ったら、お前が夜遊びしてくだ巻いてるって純から連絡が来たんだ」
「ま、巻いてねぇし」
「んで、俺も会いたかったから、遠慮せずに混ざらせてもらった」
今はもうふたりっきりで、トボトボ歩いてる。駅を通り過ぎて、人もまばらになってきた夜道を岳は自転車引きながら、話す度に真っ白な息を楽しそうに吐いて。
俺に会いたかったって、さりげなく告白してる。
「酔っ払い」
「っ!」
またくしゃっと笑った岳に鼻を摘まれた。
「岳! 手、冷てぇよ! つか、手袋!」
真冬で夜に手袋してないでチャリって超人かよ。
でも、その指先はすげぇ冷たい。
慌てて手袋を外そうとしたら、もう慣れっこだし、仕事中、園児と外遊びしたり水仕事してるから、冷たいのは全然苦にならないって。
「なんか、嬉しかったぞ」
「?」
何がだよ。酔っ払ってくだ巻いてることが?
「お前が俺のことを話してたりするのを眺めてて、すげぇ、俺の名前呼んでんの嬉しかった」
「そ、そんなん……」
いつもだよ。いっつも純には岳のことずっと話してた。
最近じゃ、それを言うと早く彼氏見つけろって言われるから控えてたけど、それこそずっと、ずーっと俺の恋愛の話で出てくる名前は岳だけだったんだ。
「俺は別にお前といられたら全然かまわないけどな」
「でも!」
「純じゃねぇが、お前が一番のプレゼントだ」
「!」
「なんてな」
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