第39章 静かな帰り道

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びっくりした。 まさか岳が乱入してくるなんて、心臓止まった。 ――だって、本人に聞くのが一番かなって。 しれっと答えて。この前、飲んだ時に連絡先だけはとりあえず交換してたんだって。 俺のことが心配で心配で仕方のない岳先生だからって、純があっけらかんと笑ってた。 「今日の送別会は?」 「んー? 終わったぞ? んで、帰りながら勇人に電話でもしようかと思ったら、お前が夜遊びしてくだ巻いてるって純から連絡が来たんだ」 「ま、巻いてねぇし」 「んで、俺も会いたかったから、遠慮せずに混ざらせてもらった」 今はもうふたりっきりで、トボトボ歩いてる。駅を通り過ぎて、人もまばらになってきた夜道を岳は自転車引きながら、話す度に真っ白な息を楽しそうに吐いて。 俺に会いたかったって、さりげなく告白してる。 「酔っ払い」 「っ!」 またくしゃっと笑った岳に鼻を摘まれた。 「岳! 手、冷てぇよ! つか、手袋!」 真冬で夜に手袋してないでチャリって超人かよ。 でも、その指先はすげぇ冷たい。 慌てて手袋を外そうとしたら、もう慣れっこだし、仕事中、園児と外遊びしたり水仕事してるから、冷たいのは全然苦にならないって。 「なんか、嬉しかったぞ」 「?」 何がだよ。酔っ払ってくだ巻いてることが? 「お前が俺のことを話してたりするのを眺めてて、すげぇ、俺の名前呼んでんの嬉しかった」 「そ、そんなん……」 いつもだよ。いっつも純には岳のことずっと話してた。 最近じゃ、それを言うと早く彼氏見つけろって言われるから控えてたけど、それこそずっと、ずーっと俺の恋愛の話で出てくる名前は岳だけだったんだ。 「俺は別にお前といられたら全然かまわないけどな」 「でも!」 「純じゃねぇが、お前が一番のプレゼントだ」 「!」 「なんてな」
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