4715人が本棚に入れています
本棚に追加
もう、マジで、本当に、岳の笑顔ってこんなに破壊力すごかったっけ?
前から、こんなに心臓飛び跳ねるくらいにカッコよかったっけ?
息の仕方を一瞬完全に忘れるくらいにドキッとした。
そして、今はそのドキっとした心臓の熱が染み込んだ血液が全身に巡って、足の先までドキドキしてる。
「どこか、デートするか」
「ホワイトデーに?」
「あぁ、しっかりしたデート」
「……でも」
いやか? って、優しい表情で振り返る岳に胸のところがまた熱くなった。きっと、これで数秒後にはまた足の先までもっと熱くなってる。
「それ、俺もすげぇ嬉しいじゃん」
岳に大喜びしてもらいたいのに、それじゃ、岳っつうか、俺が大喜びしちまう。
そうじゃなくて、岳が喜んでくれるところを見たいのにさ。
でも、デートはやっぱしてみたくて、チラッと伺ってみると、岳が目を丸くして俺を見つめてた。
パッと視線がぶつかったと思ったら、そのままプイッと顔を背けて髪をくしゃくしゃにする。
「勇人」
「?」
「お前、破壊力増してるぞ」
何のだよ。
それは岳のほうじゃん。
そう言い返したかったのに、「まったく……」って呟いた岳の唇にふわりとキスされて、文句どころか、また息の仕方すら忘れる。
引き寄せるとかじゃなく、岳が身体を曲げて、顔を傾げて、唇だけが少し触れる。
接点は唇だけ
そんなキスなのに全身がきゅんと感じた。
「お前が大喜びするとこを見るのが一番嬉しい……」
「……」
ほら、また、きゅんってなった。
唇が離れた瞬間、低い声でボソッと俺にだけ聞こえるように、そんなことを囁いたりするから、全身が熱くなって手袋がいらないくらい。
岳といない時はこの手袋で岳と手を繋いでるような気持ちになれて幸せなのに、岳といる時は手袋よりももっと温かいもので全身がポカポカになる。
最初のコメントを投稿しよう!