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「岳、カッコよすぎだ」
「どこがだ。それを言うなら、勇人は可愛すぎだ」
「どこがだよ」
これかな。
純の言ってた、砂を吐くようなバカップルって。
なんて思いながらふたりしてクスクス笑ってる。
どこかこそばゆくて、つい笑いが零れてくる。
「送別会、楽しかった?」
「はぁ? 楽しかないだろ、そんなん」
「そう? 俺の職場の送別会って、宴会芸とかやったりするから、けっこう面白いんだけど」
その時に流行ってる芸人ネタなんてパクりまくりだ。
その中でも吉橋さんはかなりの笑いを取れるパフォーマンスができて、けっこう皆楽しみにしてたりもするくらい。
俺はまだまだだけど。
っつうか、羞恥心が邪魔をして、まだ大爆笑を取れるレベルに達していない。
「基本、女性ばっかの職場だからな。食べて話して飲んで終わりだ。男の俺は一次会で抜けるし」
「そっか」
岳、カッコいいから、ちょっとだけさ。
「んなんねぇよ。女ばっかの、ほら、女子会みたいなのは男にとっては相槌だけで過ごすのがベストなんだぞ。今日のはひとり寿退社だったから、余計に結婚の心得みたいな話してて男の俺はだなぁ」
「居心地、悪かった?」
「……まぁな」
そっか。
あんなに人気者の岳でも居心地そんなに良くないって場所もあるのか、なんて笑ってると、人気者じゃねぇって反論してる。
岳は人気者で、皆が岳のことを好きで、俺は到底手の届かない人だと思ってたよ。
「そっか女の人ばっかだもんな。仲良い先生とかいねぇの? いや、変な意味じゃなくて友達として」
「……」
先生友達みたいな。
俺はゲイだからか女の人は基本的に、っていうか全員恋愛対象から外れる。
友達付き合いまでにしかならないけど。
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