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伊賀先生は美人だと思う。
マスクしてたけどさ、マスクしててもわかるくらいなら、それってすっげぇ美人ってことだろ?
娘さんも可愛かったし。
優しくて、美人で、同じ職場で。
岳はカッコよくて強くて明るくて優しくて。
きっと並んだらお似合いだろうなぁって思った。
「随分前だ。もうとっくに別れてるし、連絡先も知らない。職場も違うしな。そうか、結婚したのか」
「……うん」
何、これ。
なんで、こんなに苦しいんだろ。
「昔のことだし、隠して後で、どっかから、誰かから知らされるのなら、俺がお前に伝えておきたいと思ったから話した。もう、何もない」
「……うん」
わかってるんだ。
岳が俺のことを今、本当に好きでいてくれるってわかってる。
純が溜め息つきながら「バカップル」ってぼやくくらいに好きになってもらえてる。
こうして過保護なくらい大事にされてる。
送別会があって明日も仕事あるのに、短い時間でも会いに来てくれる。
それって会いたいって思ってくれてるってことだ。
キスした。
岳が嬉しそうに幸せそうに俺にキスした。それだけで充分だ。
「勇人……」
「うん」
言葉だけじゃ伝えきれてないって岳に思わせちゃうくらい、俺って顔に出てた?
あ、純にもモロ顔の出てるって呆れられたっけ。
そっか、こういう時、岳に面倒な思いをさせちゃうんだな。顔に出ちまうのって。
直さなくちゃな。
でも、どうやったら直せるんだろ。顔に出そうなんて思ってなかったのに。
岳が言葉だけじゃまだ変わらない俺の顔を見て、気持ちを込めた、すっげぇ、ものすごい丁寧なキスをしてくれる。
触れただけなのに、全身が痺れるくらいに気持ちが詰まったキスを。
「うん、岳」
わかってるよ。
本当だ。
ちゃんと伝わってるよ。
岳が俺のことをすげぇ好きでいてくれているって。
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