第40章 初めての嫉妬

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伊賀先生は美人だと思う。 マスクしてたけどさ、マスクしててもわかるくらいなら、それってすっげぇ美人ってことだろ? 娘さんも可愛かったし。 優しくて、美人で、同じ職場で。 岳はカッコよくて強くて明るくて優しくて。 きっと並んだらお似合いだろうなぁって思った。 「随分前だ。もうとっくに別れてるし、連絡先も知らない。職場も違うしな。そうか、結婚したのか」 「……うん」 何、これ。 なんで、こんなに苦しいんだろ。 「昔のことだし、隠して後で、どっかから、誰かから知らされるのなら、俺がお前に伝えておきたいと思ったから話した。もう、何もない」 「……うん」 わかってるんだ。 岳が俺のことを今、本当に好きでいてくれるってわかってる。 純が溜め息つきながら「バカップル」ってぼやくくらいに好きになってもらえてる。 こうして過保護なくらい大事にされてる。 送別会があって明日も仕事あるのに、短い時間でも会いに来てくれる。 それって会いたいって思ってくれてるってことだ。 キスした。 岳が嬉しそうに幸せそうに俺にキスした。それだけで充分だ。 「勇人……」 「うん」 言葉だけじゃ伝えきれてないって岳に思わせちゃうくらい、俺って顔に出てた? あ、純にもモロ顔の出てるって呆れられたっけ。 そっか、こういう時、岳に面倒な思いをさせちゃうんだな。顔に出ちまうのって。 直さなくちゃな。 でも、どうやったら直せるんだろ。顔に出そうなんて思ってなかったのに。 岳が言葉だけじゃまだ変わらない俺の顔を見て、気持ちを込めた、すっげぇ、ものすごい丁寧なキスをしてくれる。 触れただけなのに、全身が痺れるくらいに気持ちが詰まったキスを。 「うん、岳」 わかってるよ。 本当だ。 ちゃんと伝わってるよ。 岳が俺のことをすげぇ好きでいてくれているって。
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