第40章 初めての嫉妬

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ノンケなのに、男の俺をすげ、純も呆れるくらい、岳は大事にしてくれてる。 でも考えちゃったんだもん。 一瞬だけだけど、すぐにちゃんと脳みそが?き消してくれたけど、思ったんだ。 ごめん。 岳の、この唇に伊賀先生もキスされたんだって。 知ってたくせに、なんで急に今、こんなに苦しくなるんだよ。 四十の岳が俺だけ、なんてありえねぇってわかってたくせに。 「初めてっ、だからっ、ごめっ」 顔に出ちまうから俯いて、できるだけ岳に見えないように隠そうとした俺を丸ごと岳が抱き締めてくれる。 強く、痛いくらいにして、俺がバカで余計なことを考えないようにって。 「わりぃな、お前んちの前なのに」 「大好きだ……岳」 俺もだ、って切なげな岳の声が聞こえるんじゃなくて、耳に唇で触れて、俺の身体の奥にちゃんと流れ込んできた。 嫉妬ってどうやったら消えるんだよ。 岳が俺のことを好きでいてくれるのをちゃんとわかっていたって、純も呆れるくらい 倉敷さんも横恋慕、俺相手にそんなんありえないだろうけど、横から入り込む隙間もないくらい両想いだって 嫉妬するもんはするなんて、こんなの知らなかった。 わかんねぇよ。いらないのに、嫉妬なんてしたくねぇのに。 「おーい、勇人、お前、今日残業できっか?」 「あ、はい。平気っすよ。って、吉橋さん帰るつもりすか?」 「いやぁ、わりぃな。奥さんがインフルでよ」 「あ、それは、お疲れ様っす」 インフルは仕方ない。 つか、俺こそ、インフルで吉橋さんだけじゃなく、組み立てメンバー全員に迷惑かけまくったんだ。残業くらいいくらでも引き受ける。 インフル、か。 「勇人、休憩行ってこい。お前戻ったら帰るわ」 「ういっす」 これから残業でまだ足りていない出荷分をやりきらないといけない。 気合いを入れ直すために、一回ここで休憩してこいって吉橋さんに言われて、ペコッと頭を下げて休憩所じゃなく、自販機で買った缶のコーンポタージュを持って外に向かう。 寒いけど、休憩所じゃ皆、タバコ吸うから。 インフル、流行ってんだな。 伊賀先生の娘さんもインフルだった。 娘さん、がいるんだな。 ――そうか、結婚したんだな。 岳は知らなかった。
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