第4章 恋の輪郭

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もう、終わった。 いや、始まってもいなかったから、終わりも何もねぇけど。 つか、始めるつもりとかなかったのに、終わった。 終わらなくていい、そのままでよかったのに、終わった。 ここがファミレスだろうと、ドリンクバーで何時間居座ってんだって思われていようと、そんなのどうだっていい。 「うっ……う」 「勇人(ゆうと)そんなに落ち込むなよー、次があるよー」 「ねぇよっ!」 テーブルに突っ伏していたのを、純の慰めの一言にパッと起き上がった。 その拍子に肘がもう空になったグラスを倒したけど、そんなの関係ねぇって、俺がどんだけ長い間あの人に片想いしていたのかを改めて教えようと思ったのに。 倒れたグラスの中からツルンと滑り落ちた氷が案外、勢いよくテーブルを滑って、慌ててそれを拾い集める。 「もう仕方ないじゃん。言っちゃったんだから。ほら、お酒は怖い。酒を飲んでも、呑まれるな、って覚えたってことで」 最悪だ。 酔った勢いで告白なんて。 「……んな、簡単に切り替えられるかよ」 何年、あの人のことを好きだったと思ってんだ。 十五年だぞ。赤ん坊が高校入学したっつうの。 「……勇人」 でも、本当はわかってるんだ。 俺が諦めようが、諦め切れなかろうが、この片想いの行き着く先は結局、一番良くて「ありがとう」だ。 だから、あの宴会で岳先生にそう言ってもらえたことは一番良いエンドマークをつけてもらえたって思うべきこと。 ずっと片想いを続けていても、相手はノンケで、しかも俺のことを恋愛対象の枠から外れた場所で認識している保育園の先生。 十五年前に世話していただけの園児はそもそも恋愛枠に入れてもらえていない。 ゲイで、ノンケを好きになった。もうその時点で諦めたほうがいい場合がほとんどだ。 だって、性別が違ってる。 女を好きな人に男の俺が好かれる確率は、低い。 それにプラスして、俺がたとえ女であっても恋愛枠に入らない元園児じゃ、「ありがとう」をもらえるのがベストっつうか、一番幸せなエンドだって。
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