第40章 初めての嫉妬

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伊賀先生が結婚したこと。その発言をした時の岳の表情をものすごく細かく思い出せる自分がいた。たぶん、すっげぇ見つめてたんだ。 「俺、やな奴……」 岳の表情を探るようなことして。嫉妬とかして。岳を不安にさせた。 「はぁ」 頭を冷やせよ、俺。 そんな気持ちで吹きっ晒しの外でコンポタを飲んでみる。 あっという間に冷えそうな寒さの中で、コンポタの少し小さな缶を握りしめて、俺が温まりたいのか、コンポタを冷めないようにってしてんのかわかんねぇ。 「……」 純はそれなりにモテて、彼氏だっていたことがある。 今が珍しくフリーなだけ。あいつはこういう時どうしてたっけ。純がヤキモチ妬いてたり妬かれたりして、俺に相談してきた時は。 わかってるんだけど 頭ではわかってるのに、気持ちのほうがそうじゃなくて困る。 はぁ、って溜め息が真っ白なのか確認するよりも早く、風が吹き飛ばしてしまう。一緒にこのモヤモヤも吹き飛ばしてくれたらいいのに。 『ホワイトデーのお返しに悩んでいるそこの君、こんなのはいかがですか?』 ポケットの中に突っ込んでおいたスマホがブブブって振動してた。 ロックを外して、岳からと思ったら、ラインに通知が来てて、少しがっくりしながらも純なら相談してみようかなって思いながら開いて。 「ぶっ」 思わず吹き出して笑ってしまう。 倉敷さんからだ。 この人、すっげぇタイミングが絶妙なんだけど。 俺と同じ工場勤めだからなのかな。 純はこの時間じゃまだ仕事中。 岳は仕事中だったりもするし、もう上がっている時もある。遅番早番で数時間違ってくるからさ。 でも倉敷さんはきっとほぼ生活の時間帯が一緒なんだろ。分野が違うから繁忙期じゃないらしく、今、多分、仕事上がりなんだ。 何? それ、流行ってんすか? そう返すと、ポコッと返信がすぐに返ってきた。 『流行ってる、流行ってる。だから勇人君も是非、ご購入を』 しねぇよ。つか、そのネタ、すでに純がやってるから。裸にリボン。 『本当に? 失敗したぁ』 そんな言葉がポコ、ポコっと上がってきたかと思ったら、ものすごく残念そうな顔をしたクマのスタンプが追加される。 「ぶっ」 思わず吹き出した。 打ちひしがれたクマのあとに大号泣するいかついおっさんのスタンプ。
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