第40章 初めての嫉妬

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倉敷さんも純みたいにいっぱい恋愛してきてんだろうな。 それこそ嫉妬されたこともあるだろうし。 つか、倉敷さんって嫉妬とかすんのかな。 温和そうな人なのに、誰かのことをどうしたらいいのかわからないくらい、会いたくて、声が聞きたくて、苦しくなったことあんのかな。 「……」 嫉妬とか、ヤキモチとか、岳もするんだよな。 倉敷さんすげぇ良い人なのに、岳が、あのいつでも笑顔の岳が笑わなかった。倉敷さんのことを「あいつ」って言って、少し怒ってた。 そっか、岳もこんな気持ちになるんだ。 そう思ったら、急に、本当に突然、さっきまでモヤモヤしていてどっかいって欲しいと思っていた嫉妬が、俺の中身いっぱいに詰まっている岳への気持ちのひとつになった。 ありがとうございます。仕事、戻ります。 それだけ送って立ち上がる。 もう冷え切って飲むと逆に寒くなるかもだけど、コーンを缶の底を叩いて口へと送り込んだ。 嫉妬も好きって気持ちの欠片。 うん。きっと、この缶を握り締めてる掌くらいのもん。それよりもっといっぱい好きって感情のほうがでかいんだ。 だって、俺は岳のことがすっげぇ好きだもん。つか、それしかねぇもん。 「おしっ!」 自分の尻を掌でパンパンはたいて、吉橋さんが待っている現場へ駆け足で戻っていった。
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