第41章 嫉妬は欠片、好きの欠片

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「ったく、お前なぁ……やっぱ、今日は取りやめにして」 「本! 見ようぜ! デートコース!」 あ、やべぇ、デートとかこんな人が多いとこで普通に話しちゃった。 でも、岳はそれを気にするどころか、しまったって顔をした俺を見て笑っている。 部屋に行きたいって思ってくれたことがすげぇ嬉しくて少しはしゃいでる。 そして部屋に行きたいって文句を言う岳の、困ったような、ちょっとむくれるような顔をもう少し見ていたくなった。 俺とふたりっきりになりたいって思ってくれた、岳の少しカッコよすぎる顔を、堪能したいっつうか、ちょっとだけもっと困らせてみたいっていうか。 「本屋!」 「はぁ……わかったよ」 それじゃないのが欲しいってむくれた表情に胸のところがまた締め付けられる。 「おい、勇人」 「?」 「ここ、ショッピングモールだぞ」 「? うわぁっ!」 「その顔すんなって言っただろうが」 また頭のてっぺんに岳の掌が乗っかって、今度はそのまま押し沈めるみたいにグリグリ撫でられる。 「可愛い顔しやがって」 「……」 そっか、俺、顔にモロ出るんだっけ。 そしたら、今、けっこうアウトな顔してたかもしれない。 キスしたい、抱き締めたいって思ってたから、それが顔にモロ出てたんならダメだろ。 「ほら、行くぞ。レストラン見るんだろ?」 「う、うん」 連行されるように本屋へ岳に手を引かれる。 少し強引で、少し早歩きで、なのに、俺の手を引く岳の手はものすごく優しい。 俺のことを大事にしてくれてるって、その掴まれた手首からでも充分伝わってきた。 俺も同じだ――さりげない一言なのに、それがたまらなく嬉しかったんだ。
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