第4章 恋の輪郭

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今度、中学に入る子どもがいるんだっけ? あ、そういえば、俺とちょうど吉橋さんって二十、歳が離れてた。 成人式なんだって話をした時に教えてもらったんだ。 その吉橋さんが鼻の穴を広げて、フンと息をひとつ吹く。 「わかっているだろう?」 つまり、吉橋さんと岳先生は同じ歳なのか。 もう結婚して、子どももいる吉橋さんと、岳先生は同級生。 そう考えると愕然とするくらいに歳が違いすぎる。 二十の年の差をすっげぇ、今、痛感した。 ゲイだからって男全員が恋愛対象になるわけじゃねぇ。 だから、元から吉橋さんをそういう目で見たことはない。 ノンケだし。 いや、結婚してなくてもそんなふうには考えなかったと思う。 だって、歳離れすぎてるだろ。 下手したら親子でだってありえる年の差だ。これだけ離れてるのかって。 そりゃ ありがとう、としか返さないよな。 「勇人、わかってるよな?」 吉橋さんは先輩で、兄貴ってところも越えて、もう親戚のおじさんの位置に近いものがある。 岳先生と俺もこれだけ離れている。歳も位置も、全部。 「いや……わかりたくないっす」 ニヤリと笑うなよ、そこで。 「今日は残業だぞ」 「いっつも残業じゃないっすか!」 「あれは残業じゃねぇ。俺たちの定時は八時だ」 それ、違うっつうの。 定時は五時だっつうの。 つまりは今日の帰りは八時は余裕で超えるってことかよ。 明日、土曜で休みなんだけど。今日はハナキンなんすけど。 文句を垂れるとなんでか嬉しそうに吉橋さんが笑っている。 そういうとこ、少しダブる。
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