第60章 二十っていう数字

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「勇人……」 そんな声で呼ばれたら、心臓がねじ切れそうに痛くなった。 切なくて、悲しくて、聞いてるだけで泣きそうになる。 「十五年、お前は俺を想ってくれてた」 「……うん」 「長くなかったか?」 長かったよ。すっげぇ、長かった。 「その十五年よりも俺とお前は二十年分離れてる」 「……」 「お前の長い片想いに更に五年追加されるんだぞ? そのくらい歳が違う。だから、俺はお前よりも二十年早く歳を取る」 俺が三十になれば、岳は五十、 ずっと、ずっとこの追いかけっこは追いつかない。 どんなに手を伸ばしても岳の歳にこの指先さえ触れることはない。 「お前よりも早く死んじまう。お前を残して……」 「……」 「勇人のことが本当に大事だからこそ、お前のことを想ったら、俺を選ぶべきじゃないと思ったんだ」 そんな痛そうな顔すんなよ。どこ擦りむいたら、そんな顔になんの? 手を伸ばして、頬に触れると、もっと痛そうに表情を歪めさせてしまう。 俺をひとり残すことを考えてくれた。 どうしたって埋まることのない二十年を岳も思ってくれた。 「岳、俺は……」 「勇人、だから」 「俺は岳が好きだった。ずっと、十五年間変わることなく。それはすっげぇ長くて、その間に純には彼氏ができて、別れて、また新しい彼氏ができる」 片想いをしていた長い長い十五年間だったけど。 「俺はその間、幸せだったよ。マジで」 「……」 「岳のことばっか思ってられる十五年だったもん。俺、本当に、すっげぇ好きだから。きっと岳がもし、万が一、俺より先に天国逝っちゃったらさ、そこからの二十年、もしかしたらもっと長いかも。俺、長生き希望だから。その間ずっと岳のことを想いながら、楽しく毎日過ごすよ」 一秒でも長く生きて、岳のことを好きでいたいんだ。だから、俺は長生き希望。 たまに寂しいかもしれない。 でも、そん時は純に愚痴るよ。今までの十五年間みたいに。 「んで、ちなみに、今、岳がそんな先のことまで考えてくれたことすら、ものすっごく嬉しいくらい、大好きだ。岳は? 俺のこと、どう想ってる?」 本当だよ。 今だけじゃなく、この先もずっとって真面目に考えてくれたことがたまらなく嬉しい。
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