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「相続したものを使うなり 貸すなり 売るなり好きにしたらいいよ。私は何も言わないから」 そう言葉にすると 渉夢も喜んでくれた。 土地って行ったって東京にある訳ではない。 聞いた事のある土地の名前だけど はっきりと言って使い道があるのかどうかもわからない。 その時は 売ったっていい。 私は 母と一緒に暮らした 想い出のあるあの家が手に入ればそれだけでよかった。 ◇◇◇◇◇◇ 渉夢と恭司先生と別れて マンションに帰って来た。 「拓海さん お願いがあります」 カフェテーブルに座って コーヒーを出した後口を開いた。 「わかってる。実家に住みたいんだろう?」 「・・・・・・はい。駄目ですか?」 「いいに決まってるだろう?そこだったら 作曲家さんの家だったんだから防音設備も完璧だろうし 何よりも 辰哉の両親もお隣だろう?」 「はい」 はいと頷いたはいいけど 私はこのマンションに引っ越してからは お世話になったって言うのに たっちゃんの両親のいる家には行ってなかった。 もしかしたら出所した継母がいるかもしれないと思うと 近づけなかった。 私の気持ちが 言わなくても伝わってくれていたようで たっちゃんの両親は 私を家に呼ぶことはなくて このマンションの方に遊びに来てくれている。 けど 今度からは私の元に戻って来たんだ。 堂々とあそこに帰れる。 渉夢が放棄してくれたお陰だ。
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