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時間を読んでちょうど戻るつもりだったのだろう、目算が外れ、のんきにモーターハウス内でシャワーを浴びていたのだ。
再車検までの猶予は三十分。
ホカホカと湯気を立てながらご機嫌でシャワーから出てきたナオミの前では、クルー一同修羅と化して作業をしていた。
そんなちぐはぐなチームは、その晩、もう一度気合いを入れなおそうと簡易ピットに集まる。
マシンは車検後にレギュレーション違反に繋がる改造をしないよう公平性を保つため、明日の本戦まで誰も触れないように各パーツを封印された状態で車検場に預けてあるので、ここは無くガランとしている。
屋外用の照明の発電機が唸る中、白い照明に煌々と照らされたテントの中でクルーに向けてナオミが声を張り上げた。
「いくつか失敗はあったけど、明日、本番で挽回しよう! ――ここにいる春樹と翔子が、何の不安もなく戦えるように、全力でサポートしましょうっ!」
オオォッ! ――心を一つにし、右手を突き上げて太い雄叫びを上げる。
この結束力の大事さを、ナオミや源さん、そしてケンさんの幹部たちはよく知っていた。
だから今のモチベーションなら、いつまでも続いたミスの連鎖は断ち切られ、今度こそ流れを引き寄せる――誰もがそう思っていた。
そう思っていたのに――
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