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最初から歯車は狂っていたのだ。
ドライバーとコドラはラリー初参戦。
クルーはかつて英二が乗る一号車専用のスタッフであったが、最近では別のRC部門に転属になっていて、かき集めたところでラリーは久しぶりの実戦だ。
幹部も二年ぶりのARCとあって、レギュレーション変更の対応で手一杯であり、……そしてこれが一番キツい、ひた隠しにするチーム存続の条件が真綿で首を絞めるようにじわじわとプレッシャーをかけてくるのだ。
――普段なら絶対に犯さないケアレスミスが至る所で発生する。
車検からしてもうおかしかった。
昼頃レッキ車が戻ると軽い昼食をとり、午後一時から本番用のマシンの車検が順次始まる。
車検は巨大な工場の倉庫を使った車検場で行われ、一台につき十分程度要するので十八台だと計算上180分……だがその前後に車を移動させたり指摘事項の確認などがあるので結局四時間近くかかるのだ。そしてこのチームは昨年、今年と本大会の実績がないので本戦ともに出走順は一番最後となり、何をするにも待ち時間が長くなる。
結局ARRTの車検が始まったのは午後五時を五分回ったあたり。――待ちくたびれてクルーもすっかりダレてしまっていた。
いつもならギリギリまで百項目近くある車検チェックシートを何度も見直すのに、今回はトップチームが不参戦というだけで簡単にOKを出してしまっている。
慢心とは恐ろしいものだ。――車検でまさかの指摘を食らう。
去年までは許されていたマフラーからの排気音量が、今年はさらに厳しくなり、それを知らずに基準値をわずかに超えていたのだ。
慌てて別のマフラーに変えて再車検し事無きを得たが、ここでマフラーを用意できなければ危うく失格するところだった。
まだある。
こんな一大事にナオミが不在だったのだ。
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