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春樹も同じ様にベルトを締めながら「コレ股んとこ、大丈夫かな?」と六点式の股を通すベルトをつけながら唸る。ロードスターには四点式が装着してあり、股のベルトは無いのだ。それで何となくクラッシュした時に男の大事な場所がピンチな気がしたのだった。
「平気よ。衝突エネルギーは肩の辺りのベルトで全部受け止める事になるから」
ソコは平気なはず――なぜか詳しい翔子をへぇーと尊敬の念を込めて見てしまう。すると兄の受け売りを無意識に口走ってしまった事に今更気付き、自分の発言が急に恥ずかしくなってカァーっと顔を赤らめた。
「やっ、やだ私、な、何言ってんだろう! もう、春樹のバカッ!」
そして「い、行くわよ!」と上ずった声を上げると、エンジンを始動させ、ろくに暖気もせずに一気に走り出した。
バカって事は無いだろう――そんな不満はすぐに消え去る。そう、それは『恐怖』によって塗り替えられて――
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