SSS 衝撃(上)

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「コドラ……か」  浅い知識をネットで仕入れた後、大急ぎで風呂に入った。午前三時前……湯船につかりポツリと呟く。 「アイツ……何考えてるんだよ?」  ゆっくり湯に浸かっている時間はなく、登校するために速攻でベッドに入らなければならないのだが……まだ湯から上がる気がしない。どうしても信じられないのだ。 「俺と一緒に走って……楽しいのかよ?」  レーサーを目指していたあんなに速い奴がいきなり止めるなんて……それもコドラに転向なんてあり得る事なのか? ――やはり理解に苦しむ。  うむむむむ……ブクブクブク――と口を湯の中につけて息を吐くと、やがて春樹は湯船の中から腕を大きく上げて伸びをする。  そしてハアァァ……と深いため息をつくと「やっぱりわからんっ」と最後に呟き、ザブリと湯から上がった。  朝――寝ぼけ眼で登校すると、またホームルームの後に翔子にバシッと背中を叩かれる。  そして唐突に告げられた。『これから毎晩特訓するから』と。一方的に約束をさせられ、ムッと睨んだものの、それを上回る睨みを返されてしまい、結局毎日夜の十一時半に山頂のパーキングに集合する事になったのだ。  こうして春樹のインプレッサでの走行練習が始まり――先ほど八日間の走り込みが終わったところだ。  九日目、マンネリ化しつつあったダウンヒルの特訓が終わると事態が動き始める。時刻は深夜一時。山頂のパーキングにあるベンチに二人で並んで座っている時だ。 「やっぱり今日もタイムがバラバラね……これだとコンマ5秒を削る練習にならないわ。……何か思い当たる事は無いの?」  今夜の特訓を始める前にも聞かれた事だ。それで意識しながら走っていたのだが―― 「特におかしな点は無いんだよな。……でもなんとなくアンダーが強い時がある……気がする。……関係無いよな?」
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