SSS 衝撃(上)

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「えっ? アンダーっ? 言ってよそれ早く! ……そうか、それでカウンターを過剰に当ててタイムロスしているんだわ」 「いや、だからいつもじゃ無いんだって。……進入速度も角度も揃えているのに時々挙動がブレるんだよ。……気のせいだと思ってたんだけど」  それ絶対気のせいじゃないよ……と言いながら手元の春樹の走りを記録したノートのページを次々と捲る。タイムは嘘をつかないのだ。 「そうね……タイムアタックを始めてから五日目まではほぼ右肩上がりでタイムが伸びているわ。ところが……」  そこでまたペラリ、ページを捲る。むむむ、と悩まし気な表情でノートを見ながら続けた。 「こうして見返すと、六日目におかしなタイムがあるわね。コース状況はクリア。もちろんドライ。……対向車も無くて全開アタックをしているわ。ミスした記録も無いのにタイムが5秒も落ちている」  それは変だ。純粋に練習に没頭しなければ鉄拳制裁が待っているので『新技』などの小細工も一切していない。つまり必殺技に失敗してタイムロスをしている訳では無いのだ。 「5秒って結構だよな? ……無意識にかなりカウンターを当ててるって事か?」  原因は不明だが、翔子の推理が正しければ当然の結果となる。アンダーと挌闘すると言う事は即ち失速を招くのだ。 「アンタが原因じゃないとすると、問題はこのクルマだわ。……セッティングが狂ってきてるのかもしれない。今のままだと、この練習の意味が無いから、そこで昨夜考えたんだけど――」  一旦この特訓は止めて、次の日曜日にダートを走りましょう――そうニコやかに微笑んだ。
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