SSS 衝撃(上)

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「はぁ……やっぱそうだよな」  以前顔のわからない男子生徒に「翔子はお嬢さま」と聞いていて、でも本人には直接聞けずにいたのだが、やはりそうだったか――と鈍い春樹も、アプローチを歩きながらいい加減理解した。  そして、何だか怖いから引き返すかと弱気になりつつ、屋敷の大きな木の扉の前に来ると、突然ガチャリとそれは開いた。――びっくりする。 「何で走って来ないのよっ! ……のん気に歩て来て、バカなの?」  手前に引かれたドアの隙間から、翔子の白い顔がヌウッと現れた。一体でどこで見張っているのか、春樹も段々イライラしてくる。だが―― 「わ、悪りぃ……なんかすごい庭だったから、見とれてたんだ」  と本音をこぼすと、翔子は意外にもあっさりと引き下がった。 「はぁ? ……こんなのただの別宅よ。これしきで見とれないでよね」  そしてフンッと顔を背けると、裏門から入って裏庭に車を停めて待っていて、と付け加えた。  何だよ、入れてくれないのかよ、とふて腐れるも、家族に紹介とかされたらもっと面倒なので、これはこれで良かったと言い聞かせて、今歩いてきたアプローチを走りながら戻ってロードスターに乗り込んだ。そして言われた通り白い壁伝いに車を走らせ、開いている裏門を見つけると、そのまま裏庭に車を入れた。二棟あった離れの横に駐車スペースがあり、そこにロードスターを停める。 「こっちよ春樹。このガレージに全部あるから」  車を降りてキョロキョロしている春樹に、いつの間にか裏口から外に出てガレージの前に立っている翔子が声を掛ける。二棟の離れは、一棟は住み込みのお手伝いさん用の一般家屋、そして翔子が手招きしている方は二階建てのガレージだ。  先に中に入った翔子がウィーンという音をさせてオートシャッターを開ける。更に室内にある鉄の階段を上って二階に行くと、バタバタと音させて何かをかき集める様な音を立て始めた。  春樹は外からガレージの中を覗う。車を四台は並べられそうなスペースに、インプレッサが一台だけど真ん中に停めてある。いや、良く見るとその奥にバイクが一台。……見覚えのあるバイクだ。
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