SSS 衝撃(上)

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        *** 「あら、来たわね、春樹ボーイっ?」  はいっ? ……ボーイ? ――春樹の前になにやら外人さんが立っている。  長いブロンドヘアをキラキラと輝かせ、白いぴちっとしたTシャツに、黒のスリムのジーンズを履いていて、色白な肌はうっすらと血管が透けているほどに青白い。切れ長な目に長いまつげが艶やかで、ライトグレーに輝く瞳は東洋人には無いミステリアスな雰囲気を醸し出していた。  足元を飾るブラックレザーのワークブーツも決まっていて、いわゆるカッコキレイ系の美女だ。スラリと背が高く、細い身体は尋常でないほどに腰がくびれており、小さな顔と相まって抜群にプロポーションが良い。歳は春樹よりも七つかハつくらい上だろうか? ……姉よりも少し年上な気がしたのだ。  今日、六月に入って未だ梅雨入りの発表のない空が青くて眩しい日曜日は、朝から夏の様な日差しが照りつけて、気温がグングン上昇している。そして春樹の女運もぐんぐん上昇……いや女難の相が出てくる気配がムンムンしていた。  一時間ほど前――  翔子のドライブするインプレッサであの別宅を出る……前にひと悶着あった。それは――  今日の翔子、黒いタンクトップの上に鮮やかなイエローの肩出しのTシャツを重ね、ブラックのデニムスキニーを履いていた。  際立つ脚線美に折れてしまいそうなほど細い足首。  シャツに合わせたのだろう、真新しいイエローのスニーカーはとても躍動的で、今にもどこかに駆けだしてしまいそうだ。  普段の黒や白を基調としたシックなコーディネートで大人の色気を感じさせる洗練された着こなしとは違う、原色をまとう今日の翔子はビビットでどこかチャイルディでちょっとズレてて……  ――こ、これはこれでギャップが妙にエ……、ロいぞ、と続けるつもりだったが、すんでのとろで思考を遮断される。車に乗り込む前に、改めて二度見三度見、チラチラと見ていたのがバレたのだ。すかさず怒声が飛んでくる。
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