SSS 衝撃(下)

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「――えっと……どちら様で?」  春樹はあんぐりと開いた口が塞がらない。  その超美人の外人さんはそのままピットに入ると、背を向けたまま腕にはめていたゴムバンドでフサフサと広がるブロンドヘアをぎゅっと一つにまとめて縛り上げた。白いうなじにハラリとおくれ毛が零れる。  ――わお、ビューティフォー  瞬時にそんな言葉が心の中に浮かぶ――? 「あら、嬉しい事を言ってくれるのね? ……サンキュッ」  そして振り返ってチュッと春樹に投げキッス。――だぁーしまった! 思った事がつい口を突いて出てしまった! ……のだが、キッスを受けて結果オーライか。  一人気味悪くむふふとニヤける春樹の後頭部に、刺す様な――いや、ジンベイザメをも一突きで仕留めてしまいそうな殺傷力抜群な視線が刺さる。そして停めた車を回り込む様に歩きながら、春樹にジトーっと粘着質な視線を送りつつ冷たく言い放った。 「ダメですよナオミさん、こいつバカだからすぐ勘違いしますよ?」  あらいいわよ勘違いしたって、私フリーだし――ピットの入り口付近で段ボール箱をあさり始めたナオミと呼ばれた美女が答える。そして赤いマッドフラップを四枚取り出すと、ピットの奥にいた二人の男性を呼びつけて手渡した。なにやら三人で会話を始める。 「勘違いなんかしねーよ」  ムキになって反論するも、「バッカじゃないのっ?」と軽くあしらわれ、車の横に一人置き去りにされる。目の前で打ち合わせを始めた三人に翔子も加わると、春樹はいよいよ孤立した。  まず勝手がわからない。 「ちぇ、……何なんだよ」  誰にも聞こえないように悪態をつくと、金髪美女が春樹に声を掛けた。
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