SSS 衝撃(下)

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「春樹ボーイ、あなたもこっちへいらっしゃい!」  ナオミに手をクイクイとこまねかれると、春樹は頭を掻きながらバツの悪そうな顔で向かう。ピットの入り口に輪になるように五人が揃い、ナオミの回しで紹介が始まった。  ――まず、彼はメカニック一号君。……ウソ。ウチの一号車のチーフメカのケンちゃんよ。  はい? 一号車? と春樹はいきなりそこから疑問に思い質問をしかけたのだが、翔子に「とりあえず最後まで聞いてよ」と制されシュンとなる。  ――で、隣はメカニック二号君。冗談、二号車のチーフメカの源さん。  ――でもって私が…… 「専属モデルの橘・ナオミ・シュバルツよっ! ……ドイツ人と日本人のハーフなの。ナオミって呼んでねっ!」  ウフッと身体をくねらせながらポニーを引っ張り上げた。もちろん春樹にうなじを見せつけるために。 「うっ!」  またもピンッとハートマークが飛んでくるようなウィンクをまともに喰らうと、身体の正中に何か熱く滾るエナジーを感じた春樹は、前かがみになって呻く。  だが他の三人の態度は全く違っていた。 「止めろナオミ。……そのネタは三十回は聞いてるぞ。それに青少年の純情を弄ぶな」  と、ごま塩頭が年季を感じさせる一番の古株の源さん。腕を組んで冷たくナオミをあしらう。 「『ちゃん』づけはよせって言ってるだろ! ……俺はお前より年上だ!」  と怒り気味なのはロン毛に茶髪の、見た目ちょっとチャラい系お兄さんのケンさん。 二人とも挨拶そっちのけでナオミに突っ込む。  そして最後に「あ、あんまり私とナオミさんを見比べないで! あ、脚の長さとかトラウマになるから!」と春樹に必死に訴えながら一歩、二歩後ずさる翔子。  なるほど、遠近法を使ってナオミとの絶対的な差のある脚の長さをごまかす気だ。――だが哀しいかな、まるでツンッと上を向いているようにワガママに張り出したバストとの差はどうにも隠せなかった。  比べる気はなかったのだが、隣同士並んでると、どうしても視線が交互に二人を捉えてしまう。
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