SSS 衝撃(下)

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 ――やはり背が高い。……俺と同じくらか? だとすると百七十五センチ……  ワークブーツの踵があるとはいえ、この長身はスーパーモデルの域だ。ゴクリ、未だクネる腰つきを見て興奮気味にツバを飲み込む。  対する翔子は……まあ背が低い方ではないが、それでもナオミとの差は歴然としている。相対的に十五センチくらい差があるように見えた。……つまり逆算すると百六十センチくらいだろうか? 聞いた事が無いので自信は無いが。  なるほど……これは並んだらトラウマになるレベルだ。スタイルが違い過ぎて、まるで大人と子供……翔子の主張もよくわかる。  それで、翔子を見ながら顎に手を当ててフムフムとうなずくものだから、考えている事を全て見透かされてしまったようだ。 「うわぁっ、ヒドいっ! 今、まじまじと見比べたでしょ! 絶対、む、胸とか比べたでしょっ!」 「いや、そこはそんなに見て無いよ!」  そんなにって何よっ! やっぱり見てんじゃないっ! ――何よこの、バカッ!  ドーンと突き飛ばされる。まあこうなるのも仕方がない。バストサイズは翔子にとって、地球を三度消滅させてもまだ余る爆発に等しいトラウマなのだ。  怒り冷めやらず翔子は肩で息をしながら、尻もちをついている春樹を見下ろす。さらに追い打ちの罵声を浴びせようと指をズイと春樹の鼻先に突き付けた時―― 「はいはい、止めなさい二人とも。……翔子、今日ってそんなに時間あったかしら?」  そう言いながらナオミは背後から翔子の上下する肩をピタリと押さえて制止した。 「えっ、今何時っ?」と、叫びながら勢いよく振り返ると「もう十一時半よ」とニコリとナオミが答えた。  いけないっ、今日三時までだった! ――と焦る翔子。そう、今日このダートトライアルコースを貸し切っているのは午前九時から午後三時までなのだ。その後はスクールの練習用に明け渡さなければならない。  まだ地べたに座っている春樹をフンッと鼻であしらうと、翔子はその脇をすり抜けてインプレッサに戻る。そして後部座席から自分のレーシングスーツだけを抱えてくると、そのままピットの奥の更衣室に入り、バンッとドアを乱暴に閉めた。
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