SSS 衝撃(下)

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        *** 「――ところでグラベルって何だ?」  最初の数周は軽く流して、その後、徐々にペースアップしよう、とピットを出る前にナオミに言われ、この時初めて専属モデルとは冗談で、本当はチームディレクターだった事を知る。モデルだって信じてたのに――と悔しやら悲しいやら複雑な気持ちだった春樹は、バカと翔子に軽く罵られ、源さんには「そんなんだとキャバクラでぼったくられるぞ」と失笑された。  その後もしぶとく脳内でナオミのレースクイーン姿をイメージしながらダートコースを走り始めること半周。そこでふと疑問に思ったのだ。 「バカ……そのくらい自分で調べなさいよ」  そして二秒沈黙の末、ナビシートに座る翔子は「未舗装の道っていう意味よ」と結局は答えてくれた。なるほど、それでダートコースな訳だ。心のモヤモヤが晴れると、続いてもう一つ疑問が湧いてくる。だが、聞いたらきっと自分で調べろと言われそうだが……でもどうしても気になる。――今すぐ答えが欲しかった。 「もう一つだけ。……なんかこのコースって、内側と外側に同じコースが二本並んでるんだけど……なんの意味があるんだ?」  スローペースで走ってはいるが、それでも車体がバンプする度にドガッ、やらガコッ! とタイヤハウスに当たる音や、ボディの床面を覆うアンダーガードに何かがヒットする音が車内に鳴り響く。つまりうるさくって――オープンフェイスのヘルメットにインカムが付いているのだが、レシーバー越しの話し声は、初めて経験する春樹には聞き取りづらい事この上無かった。  だから、 「もう……ちょっと考えればわかるでしょ! ……別々のコースを走るんだから相手にジャマされずに二台同時にタイムトライアルができるじゃない! つまりここは――」  ――スーパー・スペシャルステージ(SSS)よっ!  と、教えてくれたのだが、良く聴き取れなくて「えっ? なんだって?」と返すしかなかった。
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