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「まだあるわよ。……5ラップ、6ラップ、7ラップ……全部同じタイム。ぴったり揃えているわ。つまり一度きりのまぐれじゃない。いえ、……これってまるで、今の車のポテンシャルだとこれが限界だ! って叫んでいるみたいじゃない?」
「フッ、生意気な。……ドライバーなんてマシンの性能の八割も引き出せねーだろ? 天才と呼ばれた英二だって、全盛期の時で九割ってとこだ。それがこんなポッと出に、百パーセント出し切られたってのかよ? ……冗談じゃねーよ、あのインプはもう古いけど、俺自身がボディ補強から足回りまで仕上げた最高傑作なんだぞ? そう簡単に乗りこなされてたまるかよ」
「ふふっ、そうね。あなたも『柔法ボディワークの神』と呼ばれたスペシャリストだったわね。でも……ちょっと嬉しそうじゃない。まあ、メカニック冥利につきると思って認めなさいよ。……で、最初の質問に戻るけど、決めたわ、私の答えを。彼は――」
――超本物よ。
すると源さんは、またフンッと鼻を鳴らすと、すたすたと歩いてピットの奥に消えていった。
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