SSS 衝撃(下)

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        ***  午後三時――  今日の走り込みを終えてオートランドを後にした春樹は、今度は自分の運転で翔子の自宅を目指した。 「……どうした、黙ってて。……何か問題でもあるのか?」  帰りの車内で春樹が運転をしながら問いかける。……だが翔子はずっと横を向いたままウィンドウの外を見ているだけだった。  春樹はどうせナオミとの事で腹を立てているのだろうと勘ぐるが、そうではない。――色々と複雑な思いなのだ。  話すべきか、否か……そんな葛藤を少しすると、やがて重い口を開いた。 「ハァ……兄さんのレコード、破っちゃったな……」  もしてもう一度ため息。複雑な理由は、二年間破られなかった兄のレコードを誇りに思っていたのに、春樹と自分のコンビでそれを塗り替えてしまった罪悪感があるからだ。  兄が聞いたら何て思うだろう。何て事してくれたんだ! と責められるのか、それとも良くやったと褒められるのか。まあ前者は無いだろうが―― 「それは……きっと英二さんも喜んでくれると思うぞ? そうだ、これから英二さんに報告しに行こうぜ!」  春樹はステアリングを握りながら、ちょっと自慢気な顔で話した。だが、翔子の表情がみるみるうちに曇っていく。 「それ、冗談でもやめて。次に言ったら絶交だから」  冷たく言い放った言葉は一瞬にして車内を凍てつかせ、怒りの色をにじませた瞳で春樹を射貫く。初めて見る翔子の本気の怒りに、春樹は暫し言葉を失った。  やがて「ごめん」と一言謝ると、素直な疑問として持っている最近姿を見ない英二はどうしているのかを真剣に尋ねてみる。すると、
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