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「(吐息交じりに)んっ……私とやりたい? はぁっ……やりたくなぁい? (耳たぶを軽く噛む)」
「(まるで吐血したかのように)ぐはっ! (もちろんそんな訳ないが、春樹は圧倒的に女性に対する経験値が不足しているので対応しきれずに興奮死しかて白目を向く)」
「(ナオミは嬉しそうに)やだもー! 春樹ったら、なーに想像しちゃったのかしら? ……私は、『私のチームで一緒にやらないか?』って誘っただけなのにぃー? かーわいいんだからもーっ! (笑い転げながらバシバシと春樹の頭頂部を叩く)」
「ひ、ひどいっ! 今のはあんまりですよナオミさん! ……この年頃の男なら千人中千人が誤解しますよっ! (涙目)」
「はいはい、ごめんなさいね。……それに私、そんなに軽い女じゃないし。さて――」
よいしょ――と続けながら春樹から離れてイスに座り直す。二人で並んで座る形は変わらない。相変わらずディレクターチェアのひじ掛け同士がくっつくほどに近いが。
春樹はまだ色欲冷めず、荒ぶる息をナオミに気付かれないようにスーハーと整えながら、脳内を占める女性の裸体を目の前に積まれた使い古しのタイヤで埋め尽くそうと必死にもがいていた。
ところが「じゃあ次の質問いってみようか?」と言う予期せぬナオミの進行により、自分の役目を薄っすらと思い出すと、やがて潮が引くように平穏を取り戻した。
「そ、そうだった! ……舞い上がり過ぎて危うく大気圏を突破するとこでしたよ。……ってナオミさん、さっきみたいな冗談、マジ止めてくださいよ? あれを翔子に見られたりでもしたら、俺、確実に殺されますからね? お願いしますよ?」
「はーい、……わかってるわよ。それに彼女は今は、ダートコースでタイムアタックしてるじゃない? ……いない事を知っててこのインタビューを春樹は始めたんでしょ? (お見み通しとばかりに目を細める)」
「え、えっと……さあ、そうでしたっけ? ああ、でも何で翔子はいきなりそんな事するんですかね? (視線がさまよう春樹)」
「(今ごまかしたわね、と思ったナオミ)そうね。……わからないかしら? ちょっと考えればわかりそうなものだけど(試す様な視線を送る)」
「いや、マジでわからないです。……俺が英二さんのレコードを塗り替えた事と関係あるんでしょうか?」
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