SS1 再会

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 カゼは、誰かにうつすと治るらしい。  そんな都市伝説めいたうわさが頭をよぎるが、さて、昨夜誰か会ったか、これがあいまいだった。  春樹は制服に着替えてから軽い朝食を済ませると、自宅に併設された屋根付きの駐車スペースに向かう。  ロードスターのキーを捻り、エンジンスタート。  クセですぐにスロットルペダルを踏み込み、跳ね上がるタコメーターの針を見て春樹は考える。  ――昨夜のあの話し、何だったんだ?  エンジンが温まるまでの数分、ステアリングの上部を掴み、静かに目を閉じる。  ――夢か。……そう夢に違いない。  ラリーがどうの言っていた気がするが、きっと気のせいだ――そう結論づけると、ダッシュボードに取り付けた後付けの大きな水温計を確認し、ゆっくりとロードスターを走らせて学校へ向かった。  この学校は山の上――そう、昨夜の峠を上った先にある大きな湖のほとりに建てられている。  つまり山頂には春樹のバイト先のレストラン、そしてこの学校、更に大きなホテルが湖を取り囲む様に配置されているのだ。だから高校三年の教室の窓際に座る春樹の席からは、窓の下にキラキラと陽光を反射する湖面が見え絶景なり――なのだが、そんな事はお構いなしで朝のホームルームから机に突っ伏して、よだれを垂らしながら熟睡していた。  すると―― 『バシッ!』と背中をいきなり叩かれる。  眠りから一気に醒め怒りが湧いてきた。 「なんだよ!」  反射的に振り向くと―― 「えっ? ……はぁ? ……何で……えっ?」  驚き過ぎて続く声が出ずに鯉の様に口をパクパクさせる。そう、そこには―― 「柏木春樹っ!……もう一限目が始まるぞ! ……ってえっ? な、何? そんなに驚いたっ?」  背中を勢いよく叩いた張本人も、春樹の動揺を見てつられて慌てふためく。そんなに痛かったのだろうか?  そこにはどう見ても同じ学校の制服を着ている相沢翔子が立っていた。――そんなバカな。 「何でお前がいるんだよ! ……ここ学校だぞ?」 「はい? ……えっと……ああそうか。やっぱ気付いてなかったんだ。昨夜わからなかったもんね。……バカ。クラス替えで先月から同じクラスになったでしょ?」 「同じクラス? ……ウソだろ? ……同い年だったのかよっ?」
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