第2話 本文

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       プロローグ 赤紫とゴールドの髪を突っ立てたビジュアル系ロックバンドのボーカル、 ムーは歌舞伎役者の面取りのようなフェイスペインティングをしている。 怪獣か。 どぎついアイシャドウで、目を誇張して吊り上がらせ、 観客を睨みつけて歌う。 とつぜん町で出会ったら、かあさんは間違いなく逃げる。 でも大丈夫。 テレビの中にいるだけだから。 「目立つねぇ」 昼のテレビのインタビュー番組の司会者が、 ゲストのムーに、楽しそうに話しかけた。 「目立ちますよね」 口を開くと、ムーの顔は怪獣の形相から平凡な兄さんに変わった。 いい人そう。 「家からその恰好で?」 「そうっす」 「うちの人、何も言わないの」 「一人暮らしですから」 「そうか」
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