第1章

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 真理の苦悩する吐息が、表情が、赤く染まる肢体が。私の逸脱した感情に火を灯していく。男性では味わえないような背徳感もそこにはあって、終わるころにはお互いに立つのがやっとだった。 最後に彼女に連絡先を聞かれた時、私は思わず連絡先を教えてしまった。本来は行ってはいけないことだったが、それだけ私の劣情を真理は燃やしてくれたのだろう。縄後の残る腕に油性マジックでメールアドレスを書くと、彼女は苦悩とも快感とも呼べない蕩けた表情で私を見ていた。  その日から真理との連絡は行われるようになった。彼女は医大に現役で合格するほどの頭脳があることを知ったとき、私は驚きの余り携帯電話を床に落としてしまった。真理は実家を離れて一人暮らししながら学校に通っているのだと言う。 昔から彼女自身、特殊な性癖に悩んでいて。それを苦に自傷行為に走ろうとしたこともあったのだと言う。私自身、同性愛者ではないので彼女の苦しみを理解してあげられなかったが、真理であれば女性も悪くないと思うようになっていた。 真理とはお店で会うこともあれば、いつからか個人的にプライベートな時間を過ごすこともあった。出会いが出会いだったからか、性交渉に関しても特に抵抗はなかった。逆に私がラブホテルに誘い彼女を縛り付けて襲うこともあった。 デートをする時は真理が決まって甘えてくる。それを仕方ないな。と思いながら私は甘やかしていた。 「京子さんは、この仕事ずっと続けていくんですか?」 ふとした時、彼女にそう言われて私は転職活動をしていないことに気が付いた。将来のことを考えるなら水仕事なのだから、そんなに長くは続けられない。私は思い切って彼女に転職先が無いこと、仕事が見つからないことを打ち明けると、真理は意味深に頷き「任せてください」と言った。 それから2週間もしないうちに、私は有名な製薬会社の事務として働くことになった。菊野には退店を渋られたものの、最終的には退職祝いとして高価な洋酒をもらった。どうして面接もなしに働けるようになったのかと言えば、真理の父親が原因だった。所謂、縁故採用というものだ。
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