~ウィルの奇妙な1日~

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そうだ。いい1日なんだ。 例え食堂に行くまで何故か5回転んでも。 ウィルは食堂に着くと、食べ物を取りに行く。 幸いそんなに混んでいない。 「……油っこいものしか無い……」 何故かその日の朝食はウィルの苦手なものしか無かった。 食堂員の人によると、さっきまで混んでいて、人気のメニューは殆んど無くなってしまったそうだ。 「……たまたまだ。こういう日もある。」 ウィルは独り言を呟きながら席を探す。 「…シーゲル。」 「………ん。」 シーゲルが相変わらずバカ食いをしていたので、その横へ座る。 ウィルとシーゲルは割りと仲が良かった。 恐れをしらぬ性格が何となく合っていた。 「……朝っぱらから食いすぎだろう…」 「……そう、かな。」 シーゲルの前には食器が山積みになっている。 「仕方ない。僕も食べるか……」 ウィルは渋々ステーキに手をつける。 かなり細かく切って食べている。 「……う…朝から肉はキツいな……ん。」 ウィルがシーゲルの方をチラリと見ると、苺が山盛りの皿が見えた。 何気なくその一粒を取った。 「…口直しに一粒くれ。」 ウィルがそう言い、口に入れた瞬間、景色が変わった。 「………ぐぅ!?」 ウィルの足は空をきる。 「………何をしてるの?」 シーゲルはウィルの顎をつかみ、そのまま上へ片手で持ち上げていた。 「………っ!!」 ウィルはシーゲルの腕をつかむが、びくともしない。 食堂にいる人達は二人に釘付けになっている。 シーゲルはそのままウィルを床に叩きつけた。 「ぐへっ!!」 ウィルは頭をかかえ、うずくまったあと、シーゲルに怒鳴る。 「…いきなり何だ!!苺1つで!!大体精霊が人間に……」 シーゲルに一瞬にらまれ、ウィルは途中で黙る。 「…………くそ…」 ああ。食い意地のはった奴め。 もうお前とは1ヶ月は口をきかん。 そんなことを思いつつ、さっさと食堂を出る。 「………はあ。医務室に行こう。」 額のこぶをさすり、医務室へ足を運ぶ。 もう医務室で寝ていようか…?そんなことを思いながら。 「……保険医不在……」 医務室の扉にはってある紙を見ながら、立ち尽くす。 「…………」 とりあえず湿布を一枚拝借して、今度は図書室に足を向けた。
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