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そこは肌寒い部屋。
華美ではないが、黒やグレーの装飾が施されたとても広い部屋。
その部屋によく似合う大きなベッドに小さな少年が寝息を立てている。
「ん…」
少年は目を覚ますと、まだ眠いのか目をこする。
灰色の髪をして、紫色の瞳の下には印象的な隈のような刺青のような模様がある。
高級そうな絹の寝間着を着ている。
少年は軽く伸びをしたあと、チラリと壁にかけてあるアンティーク調の時計を見てから、着替えを始めた。
窓の外から日は差し込まない。
それは曇っているからではなかった。
この国では太陽が出ること事態珍しいことだった。
少年の短い人生で太陽を見たことは数える程しかなかったが、見ても眩しすぎる、暑すぎる、としか思わなかった。
彼は素早く朝の支度を整えると、ベッドに腰かける。
そして自分を着替えさせようとやってきたメイド達に馬鹿にしたような目線を送った。
自分の着替えを他人にやってもらうなんて気持ちが悪い。
少年はそう考えていた。
それでもその事を家の執事に悟られ、メイド達を首にしないよう着替えの時間分だけはメイド達を部屋に入れておくのは、彼の幼いなりの優しさなのだろうか。
そうこうしているうちに、少年の付き人が迎えにやってきた。
神経質そうな付き人の青年は、本日は国王陛下が外交からお帰りになられています、と仰々しく言った。
肌寒い廊下に乾いた靴音を響かせながら少年と付き人は朝食へと向かった。
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