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「成果はどうでしたか?陛下。」
王妃に見える美しい女性は、黙々と食事をとる国王へ話しかける。
「まあまあだな。…相変わらず他国の空気は肌にあわん。特に太陽がギラギラとしていて気分が悪くなる。」
「まあ…お疲れですのね。」
国王は斜め横に座る自分の面影を色濃く受け継いでいる少年を一瞥した後、また食事を続けた。
少年も豪華な朝食を見つめながら食事を口に運ぶ。
「ルシウス様。」
青年は自室の窓の側に腰かけている小さな主人に話しかける。
「…なんだ。」
ルシウスは自身の付き人を見もせず、返事をする。
「先ほどは陛下と会話をなされませんでしたね。」
「最初にあいさつした。」
「あれは会話とは呼びません。」
ピシャリと言う青年を無視するようにルシウスは黙り込む。
「明日はルシウス様の10歳のお誕生日ですね。」
青年はルシウスの背中を見つめる。
顔は相変わらず窓の外を見つめていて表情を伺うことはできない。
青年はゆっくりとルシウスの頭を撫でる。
無礼だ、と手を叩かない彼は、泣いているのだろうか?
「何か欲しい物は、ございますか?」
青年の問いかけには、相変わらず答えない。
ルシウスはゆっくりと空を見上げる。
今にも雪が降りそうにも見える。
太陽は、いらない。
眩しいから。
暑すぎるから。
それでも無くてはきっと、生きていけない。
ぬるい太陽が欲しい。
青年に言ってみたら、キョトンした表情をしていた。
「あ。アル!起き…」
最後まで言い切る前に、ウェンディは顔を掴まれる。
「部屋に勝手に入るなと前に言わなかったか?」
寝起きのアルビレオは、顔を掴む手に力を入れる。
「痛い痛いっごめんなさい~っ」
ウェンディは手をじたばたとさせる。
アルビレオはようやく手を離し、ウェンディをジロリと見る。
「だって朝食の時間にも来ないんだもん。」
時計を見ると、確かにもう朝食をとる時間は終わっていた。
「大丈夫だよ。持ってきたから。」
ウェンディはニッコリと微笑むと、朝食の乗ったトレイを差し出した。
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