~涙にふれて~

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図書室。 アリアは珍しく本を読んでいた。本といっても、動物図鑑だが。 「……」 簡単に目を通しながらページをめくっていく。 「そんなの読んで面白いのか。」 近くに座っていたウィルが話しかけてくる。 図書室は常に冷房が入っているうえ、大体は静かなのでウィルはよく入り浸っている。 図書室か医務室にいけばウィルがいる、と言われている。 「ん~まあ…面白いって程じゃないけど。」 アリアはウィルの手元の本をチラリと見た。 “古今東西、世界の暴君”と書いてある。 「…………」 ウィルは何だ?という顔を向けてきたが、アリアはあえて何も言わない。 「………あ。」 アリアはあるページに載っている動物に反応する。 「何だ?」 ウィルが顔をあげる。 「うん…夜兎が載ってて…」 「夜兎…近くの森にいるやつか。大型の。」 「そう。なんか懐かしくって…」 アリアは軽く微笑み、本を閉じ、席を立つ。 そして窓辺に歩いていく。 ウィルはアリアを目で追う。 アリアは窓から近くの森を眺める。 「昔ね、あの森にリーヤと行ったんだ。本当に最初の頃に……」
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