~涙にふれて~

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「…アリア。」 「も…もうちょっとだから…」 ふたりは近くの森の、道なき道を歩いていた。 髪や服に葉っぱをつけながら、深い森を探索する。 「…もう一時間も歩いてる。」 アリアは背後に冷たい視線を感じた。 …おかしいなあ…多分この道で…… 「あ!」 前方に、左右に別れた道を見つけた。 アリアは足を早めた。 「この道だよ!!これを右に…」 言葉をいいかけ、アリアは止まる。 「…どうしたの。」 リーヤはアリアの顔を覗きこんだあと、その視線の先を見た。 左の道を少し行った所に、何かが倒れていた。 リーヤが言葉を発する前に、アリアは駆け出していた。 「アリア!?…く…」 リーヤは顔をしかめ、アリアの後を追った。 倒れていたのは、大きなうさぎのような生き物だった。 体長は1m程で、真っ白な毛に、赤い目をしている。 そして足からは血を流し、ぐったりと地に臥せっていた。 「大変!!ケガしてる!!」 しゃがんで背中を撫でてやると、キュウ…とくるしそうな声をだす。 「夜兎だ…珍しい…」 アリアを追って歩いてきたリーヤが、うさぎを見て呟いた。 「…やと?」 アリアはリーヤを見上げた。 「夜行性のうさぎだよ。大型で大人しい性格。極端に太陽が苦手で月が出る頃に動き出す。」 冷静に解説してみせる。 「え…っ?」 今日は素晴らしい晴天だ。 しかも太陽がすごく高い時間帯。 そして夜兎が倒れているこの場所には太陽の光がさんさんと降り注いでいる。 「た…大変じゃない!!本部まで運ぼう!!医務室で看てもらわなきゃ!!」 アリアは夜兔の体に手をかける。 結構重い。 「リーヤ、手伝って…」 「ほうっておきなよ。」 無機質なリーヤの声に、思わず振り向いた。
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