A.ウーマン

11/13
前へ
/27ページ
次へ
それならば、私が「家を出ないで」と言ったことで両親の死は回避できたのではないだろうか。 それなのに両親は死んだ。 つまり「私が両親を家に居させた」ことで死んだのだ。 あの「1」という数値は、私が「家を出ないで」と言うことを想定した数値だったのだ。 もしも両親がなにごともなく仕事に出かけていたら。 火事のあった時間帯は仕事に出かける準備をしている時間だ。 きっとすぐに異変に気付いて、家族全員助かっていたであろう。 すべては私の、あの言葉の所為。 私の所為。 「私が、殺した?」 頭がくらくらする。息も荒い。 薄闇の視界で、ほんのりと光る月がゆらゆらとゆれている。 思わず、手元に握りしめていた小さなボタンを強く押した。 視界の隅で赤いランプがチカチカと点滅している。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加