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それから、私の左目は完全に見えなくなったわけではなく、ぼんやりとなら物を見ることが出来る。
驚異的な回復力と、執刀医の類いまれなる技術の賜物、と当時は騒がれたが、黒目の色素だけはどうにもならずに黒目の部分だけが薄い黄いろになった。
それもまた、周りの好奇心をあおる物となったのではあるが。
今となってはどうでもいいことではある。
もはや火傷がどうとか、数値がどうとかは、もはや考える必要すらないものになっていた。
数値が見えたところで、私自身がどうなるわけでもない。
実際、私は私の数値を見ることができない。
どういうわけか、頭の上の数値は鏡や水面など反射するものには映らないし、写真や動画にも一切映らないのだ。
なんとなく、きっと自分の頭の上にも数値があるのだろうということだけは感じているのだが、それを確認する手段はない。
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