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重力に従って、アリサの体が地面へと向かう。
思わず立ち上がり、窓に両手をついて下を見下ろした。
死を恐れる反面、人がどのような死に方をするのか興味があったのだろうか。
未だ人が命を落とす瞬間を見たことのない私は、目の前で繰り広げられようとしている悲劇から、目を離すことができずにいた。
周りの人間とてそれは同じだった。
私と同じようにして窓際に駆け寄り、一人の少女の行く末を見守る。
仰向けになるようにして落下していくアリサと、目が合った気がした。
それはほんの一瞬の出来事ではあったが、何十秒、何百秒とお互いを見つめあっているようにすら感じた。
遠目にではあったが、確かにアリサはニコっと笑った。
とびおりる前に私に見せたように、歯を見せて笑って見せたのだ。
その瞬間、私は彼女の死に直面することが恐ろしくなり、反射的に目をつむってしまった。
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