A.ウーマン

閉めた扉の向こうから、父親と母親の話声が聞こえる。

「ちょっと、私は大丈夫だけど、あなたは会社大丈夫なの？」

「大丈夫さ。それに、あの子があんなに取り乱すなんてただ事じゃないよ。」

どうやら、家にはちゃんといてくれるようで、私はひとまず安堵して自身の部屋へと向かい、いつもと変わらないベッドでいつもと同じように眠った。

きっと明日には両親の数値ももとに戻っているだろう。
そういう風に安直に考えていた。

翌日、私の家が燃えた。

火が付いたのは家の裏手にあったごみを入れるポリタンク。
明らかな放火だった。

早朝に行われた出来事で、両親は反応できずに煙に巻かれて逃げ遅れ焼死。
私は消防隊員に抱えられ、気付いた時には白い服を着た大人に囲まれて救急車に乗せられていた。

やけに顔の左半分が熱い。

なんだかドロドロしたものが肩を流れていくのも感じる。