A.ウーマン

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後日、私は車椅子で連れられて両親の葬式へと出席した。 包帯で巻かれた手に、無理やり両親の遺影を乗せられて。 顔の左半分は大きなガーゼのようなものでおおわれている。 黒い服を着た人達が、私の姿を見て顔をしかめ、涙を流している。 中には私をそっと抱きしめる人までいた。 たまに会う親戚の人達も、私に歩み寄って何かをしゃべりかけてくる。 なんとなく理解できなくて、私は一言だけ「はい。」と答えた。 式の後半になって、渡された手紙を読まされた。 私の言葉でない用意された手紙には、両親へ送る言葉と、放火の犯人を絶対に許さないという内容が書かれていた。 両親はいなくなった。 その事実が今頃になって私の胸を締め付け、手紙を読んでいる最中に気持ちがこみ上げてきた。 嗚咽を漏らしながら手紙を読む私に、周りの人間は賛同するかのように一緒になって泣いた。
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