第17章  前触れ(続き)

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それで我に返ったように、忍は、手に提げてきたケーキを彼女に渡した。 「生菓子じゃないから、余ったら常温で何日か持つから。ゆっくり食べて」 そして、ベッドを背後にラグの上に敷かれた座布団に、静かに腰を下ろす。 その彼の目の前に、間もなく、よく冷えたグラスとビールが差し出された。 「ありがとう」 微笑む彼女に、琥珀色の液体をグラスに満たしてもらう。 そんな些細な事だけで、どこか幸せな気分になる。 こうして始まった、念願の食事。 どれもが美味しく、彼女の温もりが伝わるようで、 忍のお腹も、心も、いっぱいに満たしてくれた。 そして、その夜。 狭いベッドの中で、彼女は艶やかに舞った。
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