第1章

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 冬の間、キリギリスを中心とした昆虫達はアリ社会をどうやって崩壊させるかを一生懸命になって考えた。冬の間は身動きがとれないというのもあって、議論は白熱する。  誰もが冬の寒さなど忘れいた。  やがて、季節は凍える冬から暖かな春へと変わった。そして、それは貴族アリの時代の終わりを告げる季節であった。  昆虫達は働きアリ達を説得して、社会を変える為に動くようにしていた。もちろん、最初は話し合いの道を探りはした。けれど、貴族アリは下々のアリの話に耳など傾けもしない。女王アリの直接訴えようにも、やはり貴族アリが邪魔をして女王アリに話が伝わることはなかった。  昆虫達は実力行使に打って出た。春先、働きアリが地上に開けた穴を通り、昆虫達は一斉に巣に押しかけた。  働きアリだけでも貴族アリの二倍はいる。その上、他の昆虫達までもが協力しての電撃作戦に、貴族アリ達は慌てふためく。女王アリを守ると口先だけで言っていた彼らは襲撃に対処など出来るはずもなく、逃げようにも一年中を通して怠けていたのが仇となって身体が思うように動けなかった。働きアリと昆虫達は貴族アリを逃がさぬよう出入り口を塞ぎ、彼らを一網打尽にしてみせた。  騒ぎを聞きつけやってきた、女王アリは働きアリから事情を説明されあきれ果てた。 「まあ、なんということ。私を守ると言っておきながら、反乱を予見できないとは・・・。おまけに、私を騙していたなんて。とんでもない連中ですわね」  女王アリはアリ社会に置いて絶対的な存在であった。彼女が言うことには、貴族アリ達も逆らえない。事情を知った女王アリはすぐに、命を下した。自分を騙したことと働きアリを虐げていたこと、それらを含めて貴族アリ達には強制労働するよう言った。  話し合いによる解決は叶わなかった。それでもこの勝利は華麗だった。誰一人、血を流すことなく勝利を収めることができた。それは、素晴らしいことだ。
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