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『向日葵、紅葉、いるか』
『はい』
向日葵と紅葉が現れた。
『お前たちは会ったことがあるのか』
『桜と一緒にいるところを見ました』
向日葵が言った。
『顔は見たか』
『はい、亡くなった彼に似てます』
『桜に築かれないようにここへ連れてきてくれないか』
『わかりました』
『絶対、桜に築かれるなよ』
『はい』
向日葵と紅葉はその場から消えていった。
シーズンはソファーから立ち上がり小窓に近づくと行き交う神達を見つめた。
桜の木の側に戻った陽希はベンチに座って食事をしている蓮を見つけ近づいた。
『仕事はもう終わったのか』
『今は昼休みだから、昼休みが終わったら仕事に戻りますよ』
『何を食べてるんだ』
陽希は蓮の隣に座った。
『すき焼き弁当です…』
『すき焼き?…美味しそう…』
『食べますか?』
『いいの?』
『俺はお腹いっぱいだからいいですよ』
蓮は箸とすき焼き弁当を陽希に渡した。
『ありがとう、いただきます』
陽希は箸ですき焼き弁当を食べ始めた。
その様子を隠れながら向日葵と紅葉が見つめていた。
それから暫くして蓮がベンチから立ち上がった。
『仕事に戻るのか?』
『はい』
『箸と弁当は俺がゴミ箱に捨てておくから蓮は仕事場に行きなさい』
『お願いします』
蓮はベンチから離れ公園を出ていった。
『行くぞ』
向日葵と紅葉は蓮のあとを追いかけていった。
『佐藤蓮さん…佐藤蓮さん…』
何度も声をかけた向日葵は蓮を立ち止まらせ振り向かせた。
『……』
蓮は巫女姿の向日葵と紅葉を見て言葉を失った。
『君に会いたいって人がいるんだけど、一緒に来てもらえるかな』
『仕事が終わってからでいいですか?』
『……』
『すみません…』
蓮は走っていった。
『紅葉…』
『向日葵は先に帰ってもいいよ、俺が連れていくから』
『すまないな』
『いいよ』
紅葉は蓮のあとを追いかけていった。
『……』
背後に気配を感じた向日葵は振り返り男を見つめた。
『俺が見えるのか』
『兄貴の友達ですか?』
『兄貴?』
『蓮は俺の兄貴だけど…』
『俺と一緒に来てもらえるかな』
『え…』
蓮実は向日葵に手を掴まれたままその場から消えシーズンの前に連れていかれた。
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