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昨日、みーちゃんはYが女だと言った。そしてXはみーちゃんだ。ならば、Yは――母親だ。
彼女は切り傷だらけの腕をモゾモゾとさせてから、「それは質問なの?」と訊ねた。ぼくはそうだと肯定する。やがて、彼女はわかった、とばかりに頷き答える。
「そうね、XとYはたしかに血が繋がっている。でも、そんなことはこの場合には関係がないの。いえ……違うか。『だからこそ』、なのよ」
彼女はそうして、寂しげに微笑む。
「そして、Xは、そんなことはさせないと、そう思うの」
「そうだよ! 死んじゃいやだ!」
ぼくは、必死にそう叫んだ。彼女もそんなぼくを見て、表情を和らげつつ微笑んでくれる。
「そうね……その通りよ」
そうして、告げた。それがその日最後の、言葉だった。
彼女は立ち上がり、そして帰路につく。ぼくはそれを送り、城で手を振り合って、そして別れて帰った。
月明かりに照らされた、その彼女のお城の周辺は、いやに静かで、その静けさが異様な恐怖心をぼくに向かって煽った。
彼女は、死んでしまうのだろうか?
そんな不安ばかりが、ぼくの心を独占していた。
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