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「最悪……この世の終わりだね……」って、ある日みーちゃんが言った。
それは、ぼくの住んでいる町で三日間にわたって行われる、とある夏祭りの初日の日の出来事だった。
「いったいどうしたのみーちゃん。そんな表情をして……」
みーちゃんはそこで立ち尽くし、沈鬱な顔をしたまま、その問いには答えてくれない。
しかし代わりに、こんなことを言った。
「Xはね、すべてを満たしているの。そして満たされてもいる。だから最悪なの。だから世界は終わりなの」
ぼくには意味がわからない。だから首を傾げて、「Xって、なあに?」と訊いた。彼女は自嘲気味に笑う。
「言えないの」そう言ってすぐに首を振るうと、すぐに言葉を付け足した。「ううん、そうじゃないな。まだ、言えないっていうのが、正しいのかな」
「ぼくは、みーちゃんが困っているのなら力になりたいよ」
みーちゃんは優しい顔をする。
「ありがとう、しーくん。あなたならそう言ってくれると思ってた。わたし、今、悩んでて、でも誰にも言えなくて……でも、しーくんはいつもそうだったから、だからわたしも、相談する気になれたんだと思う」
ぼくは素直に、その言葉を喜んだ。なぜならぼくは、みーちゃんがとっても好きだったからだ。
「聞かせてよ、みーちゃん」
彼女は、尚も僅かばかりの迷いを滲ませたが、結局最後には頷いた。
ゆっくりと、ぼくの横に来て、腰を下ろす。
「あのね」
みーちゃんは上体を折り曲げるようにして、ぼくの顔を覗き込みながら、口を開いた。
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