『Xだけの最悪』

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 それからみーちゃんとは、毎日小堀で会って、それからいろいろな話をした。  彼女は毎日同じ、白いワンピースを着ていた。それで日に日に泥だらけになっていて、それで身体の様々なところに切り傷とか青い痕が見えたりしていた。 「ねえ、みーちゃんはいつもどこで遊んでいるの?」  活発な彼女が、泥だらけになりながら、ぼくの知らないスポットで走り回っている様が浮かんだ。 「……わたしは、しーくんとしか遊んでないよ」  それは意外な答えだった。  じゃあ、どうして彼女はこうも泥だらけになっていくんだろう? 「ねえ、みーちゃんは学校は、どこに通っているの? 何年生なの?」 「三年生だよ。それで、学校はここから少し離れたところにあるの」  ぼくは彼女が年下であることに驚いた。  みーちゃんはきっと、ぼくよりも二つか三つ、上の学年であるに違いないと思っていたからだ。彼女はそれくらい、とっても大人びて見えていた。 「ねえ、しーくん」 「なに? みーちゃん」  彼女は例の大人びた笑みを浮かべると、その視線を林の方に向ける。その先からは、なんだか軽快な、祭り囃子の音が響いてきていた。 「この音はなあに?」  ぼくはそれなら知っていた。得意げに頷いて、教えてあげる。 「もうすぐ、夏祭りがあるんだよ。すぐそこの広場で、三日間続くんだ。今はきっとその練習をしているんだよ」 「へえ……そっか、お祭りかあ」  彼女は羨望の視線を、まだ見ぬ祭りの光景に向かって投げていた。 「ねえ、お祭りの日も……会えるかなあ? 会いたいな」  それは、これ以上にない申し出だった。 「うん! またここで、待ってるね!」  それで頷く彼女の様子は、ぼくにはとても嬉しそうに見えた。  それでいて、どこかはかなげにも、思えた。 「日が……陰ってきたね」 「そうだね……」  日が沈むと、家に帰らなければならない。それはぼくにとっては、いつだって悲しいことだった。今までずっと、空が赤くなると、どうしようもなく切ない気持ちに襲われる。  そして彼女と出会ってからは、空が赤くなれば彼女と別れなければならないから、尚更そうだった。  みーちゃんは立ち上がる。それが、しばしの別れの、合図だった。 「ねえ、しーくん」  けれど、その日は少し違った。 「途中まで、一緒にかえらない?」  ぼくは勢いよく振り向いた。
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