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みーちゃんの家は、とっても大きかった。
「あそこだよ。あの、白いおうち」
舗装された細い道路をふたりで並んで歩いていると、かなり離れた場所からでもそれは確認することが出来た。
彼女の指し示す指先。その延長線上にあるのは、まるで海外のお城のような、そんな家だった。
「すごーい」
ぼくは感嘆の声を上げる。
みーちゃんは、いわゆるお金持ちの子、だったのだ。学校にだって、こんな家に住んでいる子はいない。
やっぱり彼女は、他の子とは違う人間だったのだ。
「別に、すごくなんかないんだよ。わたしは、こんなんだし」
城を囲んでいる、高い塀――その一点にある門の前で、彼女はそうして苦笑しながら、自身を指差した。
汚れの目立っているワンピースと身体。うらぶれたその様を。けれど――
「みーちゃんは、とってもキレイだよ!」
ぼくは、忌憚なき本音を吐いた。
彼女は事実、綺麗だった。
どんなに汚れても、どんなに傷だらけでも、それが彼女の価値を貶めることは断じてなかったのだ。
「ありがとう」
彼女はそうお礼を言って、輝きをその顔にともした。
門を開けて中に入り、遠くに向かって伸びていく塀の中の飛び石を、彼女は渡っていく。そうして玄関前に辿り着くと、彼女は門の外にいるぼくに向かって手を振った。
ぼくはそれに振り返して、歩き出す。
空の赤には、徐々に黒が滲みはじめている。
「ああ、はやく……」
……明日が来ないかな。
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